TREKがこれまでDiscovery Channelに供給してきた旧Madonシリーズはランス・アームストロングの意見を濃く反映したもので、ホリゾンタルフレーム、インテグラルヘッド不採用、ダブルレバー台座といったスタイルを固持し続けてきたわけですが、彼が引退してから設計を一新し、新Madoneではスローピングフレーム、インテグラルヘッド、90mm幅のBBシェル、シートマストデザインという革新的アイデアを盛り込んできました。
合わせてモデルラインナップも大きく変更されましたが、同じ素材を使用しながらジオメトリの異なる2種類のフレームを設定した点が興味深いです。それぞれPro Fit、Performance Fitと呼ばれ、後者はヘッドチューブ長が30mm長くなっています(完成車ではクランクセットおよびカセットスプロケットによってギア比を変えることで差別化)。
ヘッドチューブを長くしてハンドル位置を高くするというのは、従来だとPilotシリーズのようなコンフォート系ロードバイクで見られましたが、プロユースというのは目新しい。ポジションにもよりますが、コラムスペーサーを積むよりも理に適ってます。
そこで気づいたのが、'07モデルでラインナップに加わったFeltのZシリーズ。Fシリーズとは明確に区別がされていましたが、ロードバイクインプレッション 2007 (エイ出版社)で高評価を受けていたのを思い出しました。Feltがバイクを供給しているプロコンチネンタルチームSlipstreamーChipotleではZシリーズを使用する選手もいるようで、一概に「ヘッドチューブが長い=コンフォート系、初心者向け」という式は成り立たないようになってきました。
ヤン・ウルリッヒがサドル高に比べてハンドル位置が低いポジションだったのに対し、アームストロングはそれほど落差の大きくないポジションでしたが、両名の走りのスタイルの違いから察するに、このジオメトリの変化は回転型が主流になってきたことを受けているのではないかと。ハンドルを引くように力を入れると強く踏み込めますし、クランクを速く回そうとすれば骨盤を起こした方が上死点での抜けが早くなりますし。
また、ヘッドチューブ長が長いモデルだと、1サイズ小さいフレームでもポジションを出せそうです。コラムスペーサーの数が少なくてすむのでヘッド周りの剛性がそこまで落ちないはず。Andy Schleck (CSC)は540mmのSloist Carbonに乗ってましたが、これはうちの勇者と同じサイズのフレームになります。Andyの身長が186cmということなのでシート高には大きな違いがあるものの、あえてこのサイズを選んでいるとすれば剛性面や重心のマス化でメリットがあると考えられるはず。
ヘッドチューブ長の延長および大口径化、それに伴うトップチューブ・ダウンチューブの大口径化、インテグレーテッドシートポスト採用によるシート周りの剛性確保 etc.……はトレンドの方向性としてアリだと思います。そう考えると、Madone Performance Fitはいい感じで形になってますね。
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